• お知らせ・ブログ
  • 2026.10.17

歯が欠けた・折れた方へ|破片の保管・受診の緊急度・治療の流れ

この記事の要点

  • 歯が欠けた・折れたときは、痛みがなくても早めに歯科医院を受診することをおすすめします。欠けた範囲が小さく見えても、内部の神経(歯髄)や歯の根にまでひびが及んでいることがあり、外から見ただけでは判断できません。
  • 欠けた破片が見つかったら捨てずに、乾燥させないよう保管して持参してください。破片を接着して修復できる場合があることが、国際外傷歯学会(IADT)の2020年ガイドラインで示されています[1]。
  • 強い痛み、出血が止まらない、歯がぐらぐらする、歯の位置がずれた、顔面を強く打った場合は、当日中の受診が望ましい状態です。受診までの間、欠けた歯で硬いものを噛むことや、市販の接着剤で自分で付けることは避けてください。

宮崎市の谷山歯科医院、院長の谷山です。
「食事中に歯が欠けた」「転んで前歯が折れた」「気づいたら奥歯の一部がなくなっていた」というご相談は、どの年代の方からも寄せられる、歯科ではよくあるトラブルです。この記事では、歯が欠けた・折れたときに今すぐ何をすればよいか、受診の緊急度をどう判断するか、歯科医院ではどのような検査と治療が行われるかを、歯科医師の立場から整理してお伝えします。

目次

  • 歯が欠けた・折れたとき、まず何をすればよいか
  • 受診の緊急度の目安(当日中・数日以内)
  • 歯が欠ける・折れる主な原因
  • 欠け方の深さで変わる、歯科医院での治療
  • 受診までに避けたいこと
  • 歯の破折を繰り返さないために
  • よくある質問
  • まとめと相談のご案内
  • 参考資料

歯が欠けた・折れたとき、まず何をすればよいか

歯が欠けた・折れたときにまず行っていただきたいのは、次の3つです。「口の中を軽くすすいで状態を確認する」「欠けた破片があれば探して保管する」「できるだけ早く歯科医院に連絡する」。痛みがない場合でも、欠けた面がざらついたまま放置すると舌や頬の粘膜を傷つけたり、むし歯や神経の炎症につながることがあるため、数日以内の受診をおすすめします。

破片は捨てずに、乾燥させずに持参する

欠けた破片が見つかった場合は、ティッシュに包んで乾燥させるのではなく、牛乳または清潔な水、歯の保存液などに浸して持参してください。日本小児歯科学会の患者向け資料でも、歯が欠けたときは「まず欠けた破片を探し、見つかればすぐに歯科医院に診せる」ことが勧められています[2]。
国際外傷歯学会(IADT)の2020年ガイドラインでは、歯冠(歯の見えている部分)が折れた場合に、破片を再び接着する方法が治療の選択肢として認められています[1]。ただし、破片の状態、欠けた位置、神経(歯髄)の状態によっては接着が適さない場合もあり、最終的な判断は歯科医師の診察によります。

歯が抜け落ちた場合は時間との勝負

歯が欠けたのではなく、歯が根ごと抜け落ちた(脱落した)場合は、対応が異なります。歯の根の表面を触ったり水道水でこすったりせず、牛乳か歯の保存液に入れて、できる限り早く歯科医院を受診してください[2]。乾燥した時間が長くなるほど歯を元に戻せる可能性が下がるため、この場合は「当日、できるだけ早く」が目安です。

受診の緊急度の目安(当日中・数日以内)

歯が欠けた・折れた場合の緊急度は、「痛みの強さ」「出血」「歯のぐらつきや位置のずれ」「歯以外のけがの有無」で大きく変わります。以下は、歯科医師の立場から申し上げる一般的な目安であり、迷う場合は電話で状況を伝えて相談してください。

状態受診の目安理由
何もしなくてもズキズキ痛む、冷たいものや空気がしみて強く痛む当日中が望ましい神経(歯髄)が露出または炎症を起こしている可能性がある
折れた面から出血している、歯の中央に赤い点が見える当日中が望ましい神経(歯髄)が露出している可能性が高い
歯がぐらぐらする、歯の位置が前後にずれた、噛み合わせが変わった当日中が望ましい歯の根や周囲の骨にも損傷がある可能性がある
顔を強く打った、口の周囲が大きく腫れた、意識がぼんやりした医科(救急)の受診を優先顎の骨折や頭部外傷の可能性を先に確認する必要がある
痛みはないが、角が欠けてざらつく、鏡で見ると小さく欠けている数日以内放置するとむし歯や粘膜の傷の原因になるが、緊急性は比較的低い
詰め物・被せ物の一部が欠けた、取れた数日以内(痛みがあれば早めに)内部の歯が露出すると、むし歯が進行しやすい

転倒や事故で頭部や顎を強く打った場合は、歯よりも先に頭部や骨のけがの評価が必要になることがあります。この場合は救急外来や医科を優先し、歯の治療は全身状態が落ち着いてから進めるのが一般的です。

歯が欠ける・折れる主な原因

歯が欠ける・折れる原因は、大きく「外から加わった力(外傷)」と「歯そのものが弱くなっていること」の2つに分けられます。多くの場合、両方が重なって起こります。

外傷(転倒・スポーツ・硬いものを噛む)

転倒や衝突、スポーツ中の接触、硬い食べ物(氷、骨、硬いせんべいなど)を噛んだときの力が、歯の限界を超えると欠けたり折れたりします。国際外傷歯学会(IADT)によると、永久歯の外傷の中では歯冠の破折と、歯がずれる・ぐらつく損傷(脱臼)が最も多いとされています[1]。

歯の内部が弱くなっている(むし歯・神経を取った歯・大きな詰め物)

目に見えるきっかけがないのに歯が欠けた場合、内部でむし歯が広がって歯が薄くなっていた、過去に神経を取った歯(失活歯)だった、大きな詰め物や被せ物が入っていた、といった背景がよくあります。
公益財団法人8020推進財団が全国の歯科医院を対象に行った「第2回永久歯の抜歯原因調査」(2018年)では、抜歯の主原因は歯周病が37.1%、むし歯が29.2%、破折が17.8%であり、破折の割合は35歳以降で年齢とともに高くなる傾向が示されています[3]。同調査では、抜歯された歯の歯髄の状態として「神経がなく根の治療済み」の歯が46.5%と最多でした[3]。この調査は歯科医院を対象とした調査であり、全国のすべての抜歯を集計したものではありませんが、神経を取った歯や大きな治療歴のある歯では、破折への注意が特に必要だと考えられます。

歯ぎしり・食いしばり

睡眠中の歯ぎしりや、日中に無意識に歯を接触させる癖は、歯に長時間にわたって大きな力をかけ続けます。歯の表面が平らにすり減っている、朝起きたときに顎がだるい、歯の付け根がくさび状に欠けている、といった所見がある方は、歯ぎしりや食いしばりが破折の背景にある可能性があります。歯の破折は咬合時などの過度の機械的な負荷で生じると説明されており[3]、力の問題が残っていれば修復後も再び欠けることがあります。

欠け方の深さで変わる、歯科医院での治療

歯科医院での治療は、欠けた深さが「エナメル質まで」「象牙質まで」「神経(歯髄)まで」「根まで」のどこに達しているかで変わります。歯科医院では、目で見た確認に加えて、レントゲン撮影で根や周囲の骨の状態を調べ、必要に応じて神経が生きているかの検査を行います。見た目の欠けが小さくても根まで続くひびが隠れていることがあるため、検査は省略できません。

エナメル質だけが欠けた場合

歯の一番外側のエナメル質だけが欠けた場合、痛みはほとんどなく、欠けた角を研磨してなめらかにするか、歯科用のレジン(歯科用プラスチック)で形を整える処置が一般的です。保険診療で対応できることが多い範囲です。

象牙質まで欠けた場合(神経は露出していない)

エナメル質の内側にある象牙質まで欠けると、冷たいものがしみる、空気が当たるとしみる、といった症状が出やすくなります。象牙質には神経につながる細い管が通っているため、むき出しの状態が続くと神経の炎症につながるおそれがあります。治療としては、レジンによる修復、破片の接着、欠けた範囲が大きければ被せ物(クラウン)などが選択肢になります。国際外傷歯学会(IADT)の2020年ガイドラインでは、破片が残っている場合には破片の再接着が選択肢として示されています[1]。

神経(歯髄)まで達した場合

折れた面に赤い点や出血が見える場合は、神経が露出しています。この状態では、できる限り早く歯科医院を受診してください。国際外傷歯学会(IADT)の2020年ガイドラインでは、神経が露出した歯冠破折に対して、神経の一部だけを取り除いて残りを保存する「部分断髄(パーシャルパルポトミー)」のような、神経を保存する治療が治療の選択肢に含まれています[1]。ただし、受傷からの時間、歯の成熟度、感染の有無などで適応は変わり、神経の全体を取り除く治療(根管治療)が必要になることもあります。ガイドライン自体も「ガイドラインに従えば良好な結果が保証されるわけではないが、良好な結果の可能性を最大化できる」という立場をとっています[1]。

根まで折れている・割れている場合

歯の根まで縦に割れている場合は、残念ながら歯を残せないことがあります。根の折れ方や位置によっては保存を試みることもありますが、保存が難しいと判断された場合は、抜歯のうえで、ブリッジ、入れ歯、インプラントなどの方法で噛む機能を回復する相談に進みます。歯を失った後の選択肢については、当院の別記事「奥歯を1本失った方へ|インプラント・ブリッジ・入れ歯の選び方」で整理しています。

修復に使う材料と費用の考え方

欠けた歯の修復には、保険診療の範囲で行えるレジン充填や金属・硬質レジンの被せ物のほか、自由診療のセラミックやジルコニアなどの材料があります。どちらが適しているかは、欠けた位置(前歯か奥歯か)、残っている歯の量、噛む力、見た目の希望によって変わり、一律にどちらが優れていると言えるものではありません。

受診までに避けたいこと

受診までの数時間から数日の間に、状態を悪化させないために避けていただきたいことがあります。

  • 欠けた歯で硬いものを噛まない。 残った部分がさらに割れたり、ひびが根に広がることがあります。反対側の歯で、やわらかいものを食べてください。
  • 市販の接着剤で破片を自分で付けない。 接着剤の成分は口の中で使うことを想定しておらず、歯科医院での接着や修復が難しくなります。
  • 破片を乾燥させない。 牛乳、清潔な水、歯の保存液に入れて保管してください[2]。
  • 熱いもの・冷たいもの・甘いものを欠けた側に当てない。 神経が刺激され、痛みが強くなることがあります。
  • 痛みがある場合、歯に薬を直接塗らない。 市販の鎮痛薬を用法どおりに内服することは可能ですが、歯や歯ぐきに薬を直接当てると粘膜を傷めることがあります。
  • ぐらぐらする歯を指や舌で動かさない。 根や周囲の骨の損傷が広がることがあります。

歯の破折を繰り返さないために

一度欠けた歯を修復しても、欠けた原因が残っていると同じ歯や別の歯が再び欠けることがあります。繰り返しを防ぐために、次の点を歯科医院で確認することをおすすめします。

  • 歯ぎしり・食いしばりの有無と対策。 歯のすり減りや筋肉の張りから歯ぎしりが疑われる場合、就寝時のマウスピース(ナイトガード)が選択肢になります。保険診療で作製できる場合があります。日中に歯を接触させる癖については、当院の記事「歯の寿命を縮める無意識のクセとは?」でも解説しています。
  • むし歯や古い詰め物の点検。 内部でむし歯が広がっている歯は、外からは分かりにくいことがあります。定期的なレントゲンでの確認が有効です。
  • 神経を取った歯の補強。 神経を取った歯は破折のリスクが高い傾向があるため[3]、残っている歯の量に応じて被せ物で全体を覆うなどの方法を検討します。
  • スポーツ時のマウスガード。 接触のあるスポーツをする方は、スポーツ用のマウスガードで外傷のリスクを下げることができます。

よくある質問

歯が欠けたけれど痛くない。放置しても大丈夫ですか?

痛みがなくても、数日以内の受診をおすすめします。エナメル質だけの小さな欠けであっても、ざらついた面が舌や頬を傷つけたり、汚れがたまってむし歯の入り口になることがあります。また、見た目の欠けが小さくても、内部に根まで続くひびが隠れている場合があり、これはレントゲンや診察でしか確認できません。

欠けた破片はどのくらいの時間まで接着できますか?

一律の時間は申し上げられません。破片の大きさ、乾燥の程度、欠けた位置、神経の状態によって接着できるかどうかが変わります。乾燥した破片は接着に不利になるため、見つけたらすぐに牛乳や水、保存液に入れて、できる限り早く持参してください[1][2]。破片が接着できない場合でも、レジンや被せ物で形を回復する方法があります。

子どもの乳歯が欠けた・折れた場合も受診は必要ですか?

受診をおすすめします。乳歯の下には永久歯が育っているため、乳歯の外傷が永久歯の形や生え方に影響することがあります。乳歯の破折でも、破片があれば持参し、ぐらつきや歯の位置のずれがあれば当日中の受診が望ましい状態です[2]。

他院で治療した歯が欠けた場合、どこに相談すればよいですか?

まずは治療を受けた歯科医院に相談することをおすすめします。治療の記録があり、使われた材料や歯の状態を把握しているためです。遠方で通えない、すぐに診てもらえない、といった事情がある場合は、他の歯科医院でも診察は可能です。その際は、いつ頃どのような治療を受けたかを伝えていただくと、診断の助けになります。

宮崎市内で急に歯が欠けたとき、予約なしでも診てもらえますか?

一般に、歯科医院は予約制で診療していることが多いため、来院前に電話で状況(痛みの有無、出血、ぐらつき)を伝えていただくと、当日の受け入れや応急処置の準備がしやすくなります。

まとめと相談のご案内

  • 歯が欠けた・折れたときは、破片を乾燥させずに保管し、早めに歯科医院に連絡してください。痛みがなくても数日以内の受診をおすすめします。
  • 強い痛み、出血、ぐらつき、歯の位置のずれがある場合は当日中の受診が望ましく、顔面や頭部を強く打った場合は医科の受診を優先してください。
  • 治療は欠けた深さで変わり、エナメル質・象牙質までなら修復で済むことが多い一方、神経や根まで達している場合は神経の治療や抜歯が必要になることもあります。
  • 修復後も、歯ぎしり・食いしばりや神経を取った歯の補強など、再発を防ぐ対策を歯科医院で相談してください。

歯が欠けた・折れたことでお困りの方は、谷山歯科医院にご相談ください。治療中の歯や他院で治療した歯のトラブルについては、治療を受けた医療機関への相談も含めて、状況に合った受診先をご案内します。

この記事を書いた人

  • 氏名:谷山 隆一郎
  • 医院名:谷山歯科医院(宮崎県宮崎市)
  • 公式サイト:https://taniyama-dc.jp

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断・治療に代わるものではありません。症状がある場合は歯科医院を受診してください。

参考資料

  1. Bourguignon C, Cohenca N, Lauridsen E, et al. International Association of Dental Traumatology guidelines for the management of traumatic dental injuries: 1. Fractures and luxations. Dental Traumatology. 2020;36(4):314-330. DOI: 10.1111/edt.12578(国際外傷歯学会〔IADT〕。歯冠破折の治療選択肢、破片の再接着、神経を保存する治療、ガイドラインの位置づけの根拠)
  2. 日本小児歯科学会「歯の外傷」患者向け資料 https://www.jspd.or.jp/common/pdf/injury.pdf(欠けた破片の保管と持参、抜け落ちた歯の保存方法の根拠)
  3. 公益財団法人8020推進財団「第2回永久歯の抜歯原因調査報告書」(2018年)。厚生労働省資料における引用 https://www.mhlw.go.jp/content/10801000/000462125.pdf(抜歯原因における破折の割合、年齢との関係、抜歯された歯の歯髄の状態の根拠)

※上記資料は、記事作成時にWeb検索で内容の抜粋を確認したものです。全文の閲覧は実行環境の制限により行えていないため、公開前に院長による原文確認を推奨します。