歯周病の原因はプラーク
歯肉炎と歯周炎の違いを明確に
人の口の中にはおびただしい数の細菌がいます。ブラッシング(歯磨き)がうまくいっていないところには、細菌が集まってきて細菌の塊ができます。これが歯垢、あるいはプラークと呼ばれているものです。これが歯と歯ぐきの境目の部分に長い間くっついていると、歯周病菌といわれるものが増えてきます。それらの菌は、主に血液中のタンパクなどを養分としているので、毒素を出して体の組織内に入り込もうとします。
人間の体は内部に外敵が入り込もうとした場合、白血球をはじめとした「防衛軍」をその場所に動員します。そこで体と細菌が戦うわけですが、戦場となった歯ぐきは、「焼け野原」のような状態になります。この状態が「炎症」で、実際には歯ぐきが腫れたり、出血しやすくなります。始めの段階では、歯の周囲の骨までには炎症は進んでいません。
この段階が「歯肉炎」です。
「防衛軍」がなんとか細菌の侵入を食い止めようとしても、プラーク細菌が増えれば体の方はだんだん不利になって後退していきます。結果、歯ぐきが下がり、歯周ポケットができてしまうのです。
ポケットができると細菌はさらに暴れるようになり、炎症はより深いところまで進んでいき、やがて歯を支えている骨などの部分に近づきます。すると歯を支える骨は炎症から逃げようとして、吸収されていきます。これが「歯周炎」です。この状態になると、さらにポケットは深くなり、炎症も拡大し、やがては歯の根元まで進んでいき、最終的には歯が抜けてしまうのです。
(覚えておこう!)
歯周病には「歯肉炎」と「歯周炎」が含まれますが、両者の違いをもう少しみてみましょう。
「歯槽骨の吸収が起こるのが歯周炎である」という表現がよく用いられますが、正解にいえば「歯周炎+アタッチメントロス(付着の喪失)」が歯周炎の定義です。
歯槽骨、歯根膜、セメント質といった「付着器官」の喪失が歯周炎の特徴です。
アタッチメントロスにともない、歯周ポケットが出現します。さらに、歯肉が薄い前歯部唇側面などでは、歯肉退縮という形で病状が進行することもあります。
その場合、歯肉が退縮した分、ポケットはあまり深くなりませんが、「BOPがある=炎症がある」ということですので、診断は「歯周炎」となります。