高齢になるとなぜ根面う蝕になりやすいのか
う蝕から歯を守る唾液が減少する
唾液は、むし歯菌によってつくられた酸を中和して歯を酸から守るだけではなく、酸によって溶けた歯を元に戻す(再石灰化)力があり、このふたつの力でむし歯から歯を守っています。
お年を重ねると、自然と唾液の出が少なくなります。また、薬剤の副作用で唾液減少が起きることが多くあります。その他、放射線治療などによって唾液腺がダメージを受けた時などにも唾液は少なくなります。歯を守ってくれていた唾液が減ってしまうことで、これまで以上のケアが必要になります。
口腔内の水分保持が難しくなることも
ご高齢の方では、さらに、舌や唇などのお口の周りの筋力が低下することで、お口の中全体に唾液が行き渡らなくなったり、唇を結びづらいためにお口の中の水分が蒸発しやすくなることでも口腔乾燥が助長されます。
そのような場合は、舌や唇などのお口を動かす体操(口腔周囲筋の筋訓練)をするといいでしょう。
〈口腔乾燥を引き起こす薬〉
・副交感神経遮断薬
・抗うつ薬
・抗精神剤
・抗ヒスタミン薬
・高血圧治療薬
・鎮痛薬
・気管支拡張薬
・抗パーキンソン薬
~根面う蝕のリスクファクター~
歯周病によって歯肉が退縮することが一番のリスク
むし歯は酸によって歯が溶ける病気です。歯ぐきに覆われている歯の根の部分は、酸性になりにくいため、むし歯にはなりにくいはずなのですが、歯周病などで歯ぐきが下がって歯の根元が露出してしまうと、歯ぐきで覆われていた象牙質が酸にさらされ、歯が溶かされて、歯の根元のむし歯が出来てしまいます。そのため、歯の根元のむし歯を作らない環境を守るためには、歯ぐきが下がるのを防ぐことがとても大切です。
その他のリスクはこれまでのう蝕と同じ
そして、お口の中の汚れ(プラーク)が歯の根元の周りについていたり、砂糖を含む間食の習慣があったりすると、歯の根元のむし歯ができる要因になります。さらに、唾液の量が少なくなると、お口の中の細菌が増えやすくなるだけではなく、唾液が持つ、酸で歯が溶け出すのを防ぐはたらきが低下するため、歯の根元のむし歯になりやすくなります。